フロンターレ相手のタフな一戦は、予想を超える激しい消耗戦となった。殺人的な酷暑のなか、手にした勝ち点1をどう評価すべきか。崩れず耐え抜いた守備陣の粘りを称えつつも、塩谷司や佐々木翔の存在感に依存するチーム構造や、離脱者の多さがもたらす層の薄さなど、直面する課題は重い。2026-27シーズン序盤で見えたサンフレッチェの現在地と「その先」への宿題を、冷徹な視点と期待を込めて整理する。
勝ち点1を「手繰り寄せた」と捉えるべき酷暑の死闘
フロンターレを相手にする以上、タフなゲームになることは覚悟していたが、想像を絶する消耗戦となった。ひさびさにDAZNの映像をテレビ画面越し観戦した私ですら、試合後はくたくたに疲れ果ててしまったほどだ。それもそのはず、今日の広島のピッチサイドは、19時15分キックオフとはいえ殺人的な酷暑。勝ち点3を逃した悔しさは残るものの、この極限状態で見せつけた粘りは、今後のシーズンを戦い抜く上での貴重な糧として肯定的に評価すべきだろう。
後半は完全にフロンターレに主導権を握られ、押し込まれ続けた。だが、最後の最後で決壊を許さず、ゼロで抑えきった守備陣の集中力は見事というほかない。シーズンを通じて常にスマートに勝てるわけではない。「今日は上手くいかない日だ」と割り切り、泥臭く勝ち点を拾い集める強さを持たなければ、J1の熾烈な残留・上位争いなど勝ち抜けない。その意味で、今日の引き分けは大きな価値を持つ。
冷汗をかいた場面——「塩谷司」という絶対的説得力と課題
ただし、冷や冷やさせられた場面があったことも事実だ。塩谷司がイエローカードを受けたあのプレイは、一歩間違えればDOGSO(決定的な得点機会の阻止)で即退場となってもおかしくなかった。敵将の長谷部誠監督からすれば、審判への不満を一つ二つ漏らしたくなるのも当然だ。担当レフェリーの経験不足ゆえにレッドカードを免れたのだとすれば、今日のサンフレッチェは幸運に守られていたと言わざるを得ない。
もしあそこで塩谷が失われていたら、試合展開は惨憺たるものになっていたはずだ。実際、後半に塩谷が退いて以降、攻守両面でチームの機能性が著しく低下した様子を見てもそれは明らかである。前節のレッドダイアモンズ戦を持ち出すまでもなく、ピッチ上における塩谷の存在感と説得力は絶大だ。だからこそ、我々は「塩谷以後」、そして同時に「佐々木翔以後」のチーム設計という重い課題に、逃げずに立ち向かわなければならない時期に来ている。
Gaul体制の真価と、現状の「脆さ」に向き合う
2026-27シーズンが開幕して3試合。単に手放しで現チームを称賛するのは時期尚早だろう。開幕戦は地力の差で圧倒し、前節はあまりにも全てが噛み合いすぎた。そんな幸運がいつまでも続くほど、甘いリーグではない。かつてのSkibbeは、チームが不調に陥った際の修正力やマネジメントに甘さが見られたが、新指揮官のGaulはどうだろうか。
客観的に見て、現在のサンフレッチェは決して「層が厚い」チームではない。複数のポジションをこなせるユーティリティプレイヤーたちの個人の奮闘によって、何とか破綻を防いでいるのが実情だ。現在外国人枠はセブとキム・ジュソンのみ。さらにそのジュソンをはじめ、鳴り物入りで復帰した浅野拓磨、鋭い仕掛けが武器の前田直輝、両サイドをこなす越道草太ら主力級が軒並み離脱中である。この満身創痍の状態で「優勝争い」を声高に叫ぶには、あまりにも心許ない。
2007年の記憶——「落ちない」ためのリアリズムと補強への期待
今のサンフレッチェが目指すべき第一の目標は、実は「確実に降格を回避すること」という地に足の着いたリアリズムかもしれない。J2に没落するのは、決して最初から戦力の劣るクラブばかりではない。何かの弾みで勝てなくなり、歯車が噛み合わなくなった強豪が、負のスパイラルに呑み込まれていくのだ。2007年のサンフレッチェがまさにそうだった。降格するようなメンツではなかったにもかかわらず、一度狂った歯車を戻せないまま後退した苦い歴史を、我々は忘れてはならない。
幸いにも、現在の強化部長である栗原圭介氏は非常に動きが早く、極めて有能だ。チームに潜む危険な兆候を見逃さず、迅速に補強の手を打ってくれるという信頼感がある。この3試合のデータと課題も、すでに冷静に整理・分析しているはずだ。あえて素人目で望みを述べるならば、一昨年に絶大なインパクトを残したトルガイのような、圧倒的な個でゲームを支配できる人材がもう一人欲しい。いずれは期待の大器・中島洋太朗がその域に達するのだろうが、過密日程を戦い抜く上で、前線のクオリティはいくらあっても困らない。
現在フロントの国際部スタッフに就いたトルガイ自身も、スカウティングで大きな力になってくれるはずだ。実際、セブの獲得には彼のネットワークが大きく寄与したと聞く。トルガイやパシエンシア、ジェルマンといった実力者を呼び込めるクラブへと脱皮したこと自体がサンフレッチェの成長の証だが、ピッチ上でさらに決定的な違いを生み出す新たな「ピース」の到着を期待したい。
ターンオーバーの成否——天皇杯・沖縄SV戦という試練
次節はアウェイでのガンバ大阪戦。現在勝ち点4の10位とはいえ、一瞬の隙も許されない難敵だ。しかしその前に、まずはミッドウィークの天皇杯2回戦・沖縄SV戦を乗り越えなければならない。沖縄SVはJFL所属とはいえ、1回戦でJ3のギラヴァンツ北九州を破って勢いに乗る不気味な相手だ。思えばサンフレッチェは昔から初戦の下位カテゴリー相手に苦戦する悪癖があり、過去には5つ下のカテゴリーであるおこしやす京都ACに足元をすくわれた苦い記憶もある。
だからこそ注視したいのが、ゴール監督がどこまで「ターンオーバー」を敢行するかだ。この過酷な酷暑の中、中3日で主力を張り続けさせる疲労困憊のリスクと、フレッシュな控え選手を起用することで生じる連携不全のリスク。その相反するリスクの狭間で、指揮官がどのような最適解を導き出すのか、じっくりと見極めたい。
少なくとも、同時刻にどこかのスタジアムで行われている「赤い帽子の野球屋さん」の無気力な迷走劇よりは、遥かにプロフェッショナルで、見ごたえのある仕事を見せてくれるはずだ。
酷暑の死闘で引き寄せた勝ち点1は、決して無駄ではない。しかし、慢心や過信が命取りになることは歴史が証明している。指揮官Gaulのマネジメント、補強を含めたフロントの動き、そして若手の台頭——。「塩谷・佐々木以後」を見据えた本当の勝負は、ここから始まる。まずは過酷な過密日程のなかで迎える天皇杯・沖縄SV戦で、チームがどのような姿勢と解を見せるのか、じっくりと見届けたい。
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