V・ファーレン戦での手痛い反省を経て臨んだエスパルス戦。前半の停滞感を打破したのは、松本大志の一撃と泥臭いゴール前の詰めに象徴されるピッチ上の構造的な修正であった。
浅野拓磨の復帰後初ゴールを含む4発快勝でアトラクティブな強さを見せつけた一方、川村拓夢やキム・ジュソンの負傷離脱という重大な不確定要素が浮上している。ミッドウィークに控えるヤマザキビスケットルヴァンカップ・横浜F・マリノス戦を見据え、ディフェンディングチャンピオンとして挑む総力戦の構図と勝機を冷静に紐解く。
【激闘の教訓】V・ファーレン戦の猛省と、エスパルス戦前半の苦汁
10月21日に行われたV・ファーレン戦は、いかなる背景や事情が存在しようとも、プロのピッチにおいて決して残してはならない内容と結果であった。ピッチ上で展開されたフットボールの質的評価以前の問題として、結果がすべてを定義するプロの世界である以上、勝利という成果を結実させ得なかった試合内容には、必ずどこかに本質的な不備が潜んでいたと見るべきである。セバスティアン・アレーの退場処分によって戦況が極めて難しくなったことは揺るぎない事実であり、その引き金となった江川湧清の過剰なリアクションに一定の不満が残るとしても、それを敗戦の唯一の免罪符に仕立て上げるべきではない。
その冷徹な反省と教訓を念頭に置いて臨んだ昨日の清水エスパルス戦であったが、前半の戦況は決して楽観視できるものではなかった。相手に決定的なシュートを打たせてはいなかったものの、ポゼッションと試合の主導権は色濃く相手に握られており、サンフレッチェが意図する形でボールに関与できる局面は極めて限られていた。さらに前半途中で川村拓夢が負傷交代を余儀なくされるアクシデントも重なり、チーム全体に暗雲が漂う展開を強いられた。仮にあの場面で先制点を献上していれば、再びV・ファーレン戦の惨状を再現するリスクすら孕んでいた。
【歓喜の旋律】膠着を穿つ先制点と、アトラクティブな圧勝劇
戦況を一変させたのは、やはり重厚な先制点であった。前節のV・ファーレン戦では影を潜めていたミドルレンジからの積極的な一撃が、膠着したピッチの空気を鮮やかに切り裂いた。松本大志の躊躇のない弾道も見事であったが、そのシュートの軌道に合わせてゴール前へ果敢に詰めた鈴木章斗と鮎川峻の泥臭い献身こそが特筆されるべきだ。両名の果敢なスプリントが相手ゴールキーパーの視界と反応を極限まで制限し、結果としてキャッチを許さずにボールを網へと吸い込ませる決定打となった。
先制点によって主導権を完全に掌握した後半は、サンフレッチェの標榜するアトラクティブなフットボールが完勝劇として結実した。「菅キャノン」の強烈なこぼれ球に抜け目なく詰めた浅野拓磨の復帰後初ゴール、そして鈴木章斗が見せた美しい崩しからの追加点。最後のオウンゴールについても、相手ディフェンダーの接触がなければクシニ・イェンギの来日初ゴールとなっていただけに、僅かに惜しまれる程度に過ぎない。フットボールにおいて、試合の均衡を破る最初の1点が持つ構造的な重みをあらためて証明する展開となった。
【総力戦の覚悟】怪我人の暗雲を越えて挑むルヴァンカップ連覇への道
しかしながら、次節、ならびにミッドウィークに控えるヤマザキビスケットルヴァンカップの横浜F・マリノス戦に向けた展望には、看過できない厳しさが横たわっている。ストッパーのキム・ジュソンが再び負傷でピッチを後にしており、前半に退いた川村拓夢の状態も含め、選手層のやりくりは極めて緊迫した局面を迎えている。これまでのルヴァンカップで対峙してきた相手とは異なり、今度の相手は屈指の強豪だ。いかにターンオーバーを機能させ、どのピースを盤面に配置するのか。特にドイスボランチと最終ラインの組み合わせには、綿密な戦術的解法が求められる。
最終ラインの左サイドに関しては、東俊希にその重責を託す形が最も現実的だろう。幸いにも左ウィングバックの位置では菅大輝が絶好調を維持している。課題となるのは右サイドの運用であり、中野就斗と新井直人の稼働率が限界近くに達している現状を鑑みれば、越道草太の先発起用という選択肢が現実味を帯びてくる。ボランチの1枚には中島洋太朗を抜擢し、その相棒には川辺駿か松本大志を配する形が有力か。リザーブには小林志紋や野口蓮斗といった若手を帯同させ、不測の事態に備えるリスクマネジメントが不可欠となる。
いずれにせよ、3冠という巨木を伐り倒そうとするならば、「過密日程や怪我人の多発」を理由にした敗北の弁明は一切通用しない。不測の事態すらも組織の力で飲み込み、結果を掴み取ってこそ真の勝者たり得るのだ。次節のリーグ戦の相手であるホーリーホックは、アウェイとはいえ格下の相手である。したがってクラブの戦略的プライオリティは、まず目前に迫ったルヴァンカップのF・マリノス戦へ全全力を注ぎ込む方向へ舵を切ることになるだろう。無論、ホーリーホックがV・ファーレンの成功体験を踏襲し、執拗なリアクションサッカーを仕掛けてくることは容易に予見できるため、警戒を怠ることは許されない。
最も重要な警戒事項は、相手の粗暴なプレイや挑発行為に対して感情を乱されないという組織的自制である。F・マリノスは王者の矜持と高いプライドを備えたクラブであり、露骨な挑発行為に走る可能性は低いと考えられる。しかし今後の戦いにおいては、セバスティアン・アレーや、時に熱くなりやすい面を持つ中島洋太朗に対し、相手が意図的な挑発を仕掛けてくる局面は十分に想定される。それらをいかに受け流し、ピッチ上のパフォーマンスへと昇華させるかは、チームマネジメントの真価が問われる部分だ。
3冠達成という至高の目標を掲げる以上、この一戦は絶対に引き下がることのできない第一関門である。ましてやサンフレッチェは、ヤマザキビスケットルヴァンカップのディフェンディングチャンピオンとしてピッチに立つ。王者たる誇りを胸に抱きつつ、泥臭く白星を毟り取るプレイを徹頭徹尾貫いてほしい。現在のサンフレッチェならば、その難業を完遂できるだけの強靭な地力を備えていると確信している。
過密日程と怪我人の多発——どれほど過酷な逆境が立ちはだかろうとも、それを組織の力で乗り越えてこそ真の王者たり得る。
3冠達成という至高の頂へ向け、まずはルヴァンカップ連覇へ向けた最初の関門。誇り高く、そして泥臭く白星をもぎ取る紫の戦士たちの真価が、今まさに問われようとしている。
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