名実況と迷実況の間に

おもひで

このところ、暇つぶしに過去の競馬実況をYouTubeで見たりしている。競馬というのはまさに刹那的に状況が変わるスポーツであるから、実況アナウンスとしてはかなり難しい部類に入るんだろうと思う。それでも、ときどきくすりと笑いたくなるような実況も出てくるのであって、そういうのだけを特集した動画もあるところだ。で、それに主に貢献しているのが、フジテレビの青嶋達也アナであるというのも、競馬ファンの一致する見方だろう。

青嶋アナが損をしているのは、関西テレビに杉本清、馬場鉄志という名人が二代続いたこともあって何かと比較されることかもしれない。それに、「迷」実況とされているのはほとんど言い間違いか舌が回らなかったものであって、あんなの咎めていたらアナウンサーのなり手なんてなくなってしまう。それに、たいがいのアナウンサーはそういうエピソードのひとつやふたつはあるものだ。

野球の実況という点で言えばもっとも安心して聞いていられるのはABCだと思う。その筆頭格は叙事派の植草貞夫アナに叙情派の故安部憲幸アナだが、ご両人とも長くやっていればそりゃいろいろある。高校野球の中継で「一挙5点、近鉄の猛攻」とやってしまったのはあまりにも有名だが、ほかに平和台球場アブラムシ事件とか、ネタには事欠かない。植草アナだって選手のアンケートを紹介するときに中原めいこと中村メイコを混同してしまったという逸話がある。だから、実況の巧拙とこういう話は必ずしもリンクしないと思う。

翻って、ヒロシマ球界ではどうか。はっきり言って、「迷」実況が出来るほどの域にも達していないと思う。早い話が、下手くそなのだ。もっと言えば、エース不在だ。かつてはRCC、HTV、HOME、TSSにそれぞれ上野隆紘、加藤進、井村尚嗣、神田康秋というエースがいて、彼らを見て次世代が育つという構造があった。RCCなどかつては非常に全体的にレベルが高かった記憶がある。1990年代初頭くらいまでは。

今は、まったく駄目だといっていい。控えめに言って話にならないのだ。なにが言いたいのかさっぱり分からない。そのうえに、蘊蓄系とでも言うべき試合内容と関係ない小ネタを蕩々としゃべるのが出てきて、興醒めにもほどがある。はっきり言って坂上俊次のことなのだが、最近石田充にもその症状が出てきている。そんなことしゃべる暇があったらもっと目の前の事象に心を配れと言いたい。そんなRCCのエース格は今や一柳伸行なのだが、彼ですら好ましく感じられる始末だ。まあ彼の泣き節はそれなりに聞けるのだが。

こうなった原因はアナウンサーの勉強不足と言ってしまえばそれまでなのだが、解説者が甘いというのも言えると思う。アナウンサーのつまらぬ蘊蓄をヘラヘラ笑って聞いていれば、そりゃアナウンサーも勉強しなくなる。かつてホームテレビが野球実況アナを若返らせたらあまりの下手くそさに解説の大下剛史翁のお叱りが毎日のように電波に乗る羽目になったことがある。その時は結局井村アナを現場復帰させて事なきを得たのだが、このくらいのことがあっても良いと思う。

昔話をするのもわびしいのだが、かつてラジオ日本にいた故島碩弥アナは、権利の都合でラジオ日本がジャイアンツ戦中継できないときによく市民球場のカープ戦を実況していたのだが、時に解説者なしで務めていた。こういう名人芸は、もう出るまい。いや、もう求められないのだろう。所詮今の野球中継、特にヒロシマ球界では、現体制を讃美する幇間芸が求められるのみなんだろうな。

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コメント

  1. Senior より:

    まあ最近はエエ実況もおまへんわ。
    因みに私がエエ実況やなと思うのは
    サンテレビの西澤アキラ(すんまへんな、漢字が出まへんのや)アナウンサーや
    同じくサンテレビの谷口英明アナウンサーでんな。
    お二人の実況は聴きやすく、かつ面白かったでんな。
    なお西澤さんはサンテレビの実況当時はフリーのアナウンサーで御年89歳にして
    現役アナウンサー。
    日本最高齢のアナウンサーですわ。
    谷口さんは今はもうサンテレビを退職されました。

    まあ広島だけやないでっせ、今はどこもそう。
    完成されてない未完成のヤツばっかりですわ。

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