またしても、シルバーコレクターの呪いとなりかねなかったところだった。バックパスをかっさらわれての失点。残された時間も進んでいってアディショナルタイム突入となったら、1週間に二度目の決勝敗退も覚悟していた。ぎりぎりのところでPKをもらっても、これまた日曜日のこともあったから、神に祈るしかないというのが本当のところだった。
ほんとうに、PKが決まるまでの時間がこれほど長く感じたことはない。ピエロス的には普通のプレイだったに違いないのだが、なんか素晴らしいテクニックがはまったようにも見えてしまった。思うにあの日曜日のPKも、やはりナッシムかピエロスに任せたらよかったんだろうと思うけれども、今となっては詮無いことだ。
で、そこで終わらなかったのが今年のサンフレッチェの強いところかもしれない。残りわずかな時間でさらに猛攻をかけて、最後の最後のセットプレイ。キックの精度も高かったがドンピシャリの動きを見せたピエロス。ここまでなかなか本領を見せることができなかった彼の本当の危険さを、一番いいところで見せた。それが、銀を金に変えた理由だろう。
しかし、これまでの決勝戦の涙があまりにも積もり積もりすぎて、いざ栄冠をつかんでみたら、なんとなくぽかんとしてしまった自分がいる。そりゃ現地で見ていたらよかったのだろうが、こういうものの決勝戦って必ず舞台は国立やら埼スタやら日産スタやら関東のスタジアムである。運営上難しいのかもしれないが、せめてYBCルヴァンカップくらい広島に招致できないものかと思う。でないと、決勝戦のたびにアウェイ戦をやらされるのは、なんの罰ゲームかとさえ思うのである。
話がそれた。いずれにせよサンフレッチェ広島発足後初のカップ戦タイトルとなったことは間違いない。これでシルバーコレクターの呪縛からも解けるだろう。これなら、来年は、少なくとも新スタジアム会場初年度には三冠を狙うといっても、あながち大ボラともいわれないだろう。
しかし、この劇的な勝利は、やはり人知の及ばないものが働いたのだろうか。ひょっとしたら、わずか1年ではあるが紫の戦士であった工藤壮人が引き寄せてくれたのかもしれない。思わぬ形で人生の幕を下ろしてしまった彼に哀悼の意を表するとともに、ありがとうといいたい。