台風によって止まるもの。

スポーツ

台風中止の報を見て訝しんだのも束の間、思い込みという名の惰性が、どれほど思考を止めているかを改めて思い知らされることになった。天気の読み違いに始まり、栗林のスライド起用、ファームの迷走、そして「育成球団」という虚構まで──今日の中止は、カープ界隈が抱える思考停止の連鎖を、むしろ鮮明に浮かび上がらせている。

 台風の如く止まる思考

かなり早い時刻に中止が打たれたのを見て最初は訝しんだが、よく考えれば台風15号が東からやってきている。天気は須く西から変わるという思い込みが、思考を止める典型例と言っていい。そもそも夏と冬はその限りではないし、夏の台風などどこから来るか分からない。1991年9月に広島へ甚大な打撃を与えた台風19号は、真南から直撃したではないか。

 休養にならない休養

台風の影響はしばらく続きそうで、現時点での明治神宮野球場付近の予報も明日は芳しくない。進路がわずかにずれて雨雲の位置が変われば「ひょっとしたら」程度である。チーム的には今日の中止は織り込み済みでなければ困るが、明日は難しい。一応やれる前提で準備するしかない。それだけに、明日の予告先発を栗林良吏のスライドとした判断が正しかったのか、そこは問題として残る。

 飛び飛びの敗戦が積む炭団

試合がなくなるのは選手にとって休養になると思われがちだが、実際はそうでもない。5連敗中のカープにとって、1試合ないし2試合の中止は決して良いことではない。大連敗になるときは、3連敗が積み重なるケースは案外少なく、むしろ試合が飛び飛びになって1敗2敗が続く形が多い。これは「弱い」チームを見てきたからこそ分かることだ。

だから、明日か明後日に行われるであろう試合を楽観することはできない。明後日までずれ込んだ場合、栗林をさらにスライドさせればそれだけリスクが増す。では岡本駿を投げさせるかといえば、それもまた別のリスク要因だ。しかし、ほかに手があるかといえば、ない。要するに、カープにとって何ひとつプラス要因がない。よほど打線が急に大爆発すれば別だが、そんなもの宝くじの高額当選を待つようなものだ。

 長打力は正義、そして迷走する投手起用

これを書いている現在、ファームのホークス戦が行われている。奨成とラミレスのソロホームランを含め10安打5点を取ったものの、佐藤柳之介が3本ホームランを浴びて吐き出してしまった。安打数だけ見れば10安打対4安打だが、長打力は正義であることを如実に示している──というより、何度思い知らされれば分かるのかと言いたい。

オフェンスもそうだが、今のファームは投手起用の意図がまるで見えない。齊藤汰直をスターター修行させたいのは理解できるとしても、それ以外は常廣羽也斗を先発させてブルペンデーよろしく回したり、意味不明な運用が続く。今日はその常廣をリリーフで使って炎上させているところで、ここまで来ると投げさせられている投手が気の毒だ。

 「育成」の看板は体のいい嘘

球団当局とコアファン層は二言目には「カープは愚直なまでに育成する球団」と言う。しかし、この現状を見れば、それは単なる思い込みにすぎない。いや、思い込みというレベルではない。はっきり言って体のいい嘘だ。デタラメだ。この現状のどこが育成球団と言えるのか。育成選手が出てきたら育成球団なのではない。では誰がチームの核となる選手に育っているというのか。

 看板戦略の中身は空洞

返す刀で言えば、これも何度も指摘しているが「守り勝つ野球」などと言いながら、その扇の要であるキャッチャーの補強を怠り、ズタボロの状態で戦っている。「伝統の機動力野球」と言っても辰見鴻之介と大盛穂が盗塁するだけで、組織としての機動力は皆無だ。そもそも「機動力」を盗塁数でしか測れないアンポンタンのなんと多いことか。

 思い込みという名の嘘出鱈目

蓋し、現状のカープは、頭の悪い善意のコア層ファンが語る「思い込み」とは逆方向に進んでいる。至極当然であって、それは思い込みという名の嘘出鱈目だからだ。そういう意味では、こうしたコア層ファンの垂れ流す言説は──いや、その存在自体が害悪であると言わざるを得ない。台風の風に吹き飛ばされ、あるいは雨に打ち付けられてくれないものか。

結局のところ、台風により止まっているのは、風の影響ではなく思考なのだ。

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