緊張感に満ちたガンバとの攻防戦を経て、勝ち点1を持ち帰ったサンフレッチェ。開幕4戦で勝ち点8という数字は、現実的なスタートダッシュとして決して悪くはない。しかし、セバスティアン・アレー交代後に見せる攻撃の停滞や、中盤に求められる「老獪さ」の不足など、上位争いを繰り広げる上で越えるべき壁も明確に浮かび上がっている。クシニ・イェンギ獲得報道の真意や、変幻自在の3バックが示唆する課題まで、 紫の戦士たちが描く進化の途上を冷徹に解剖する。
緊迫の攻防と、序盤戦における現実的なアプローチ
昨日のガンバ大阪戦はスコアレスドローに終わり、サンフレッチェ広島は勝ち点1を積み上げる結果となった。開幕4戦を終えて勝ち点8の4位。シーズン序盤のスタートダッシュとしては、決して悪くない立ち上がりである。現在のサンフレッチェが圧倒的な本命という立ち位置にない以上、まずは序盤で躓くことなく、降格圏リスクを回避しながら勝ち点を刻む現実的なアプローチが必要不可欠だ。現時点でチームの最終的な評価を下すのは、まだ時期尚早と言えるだろう。
もちろん、38試合という長いシーズンにおいて、全てのゲームで完璧な内容を披露できるわけではない。ガンバ戦の前半は明らかに不出来であり、特に川辺駿と中島洋太朗によるドイスボランチのミスもあった。あの展開で先行されていれば、一気に暗雲が立ち込めていたはずだ。そこを無失点で耐え抜き、最低限の勝ち点をキープした粘り強さは評価されるべきだろう。惜しむらくは、試合最終盤に鮎川峻が倒されたシーンが、ほんの少しペナルティエリアの外であったことくらいか。
直後のカープの試合があまりにも無残だったからというわけではないが、このサンフレッチェのゲームには終始ピンと張り詰めた素晴らしい緊張感が漂っていた。終盤にガンバ側が数的不利に陥りサンフレッチェが怒涛の押し込みを見せたものの、相手ゴールを割ることはできなかった。それまでの時間帯も含め、互いの意地と戦術がぶつかり合う実に見応えのある攻防戦だったと言える。
セブ依存の解消と、前線へ求めるエゴイズム
ただし、戦術面において一つ大きな懸念が浮き彫りになった。セバスティアン・アレーが途中でベンチに下がると、途端に攻撃の引き出しが減ってしまう点だ。今期のサンフレッチェの魅力は、従来のサイドからの崩しに加え、190cmのセブへ向けて縦にハイボールを当てるダイレクトな選択肢が加わったことにある。しかし、彼がピッチを去るとその縦軸が消失し、昨年までの「ボールは保持するが攻め切れない」煮え切らないアタックへと逆戻りしてしまう危険性を孕んでいる。
この局面を打開すべく、クラブはオーストラリア代表ストライカーのクシニ・イェンギ獲得に向けて動いていると報じられている。セブと同じく190cmの体格を誇る大型 FWであり、獲得が実現しコンディションが整えば、セブとの交互起用はもちろん、試合展開に応じたツートップという強力なオプションも視野に入る。ここに浅野拓磨が復帰してくる未来まで描けば、前線の破壊力への期待は膨らむばかりだ。
思い返せば、1994年のステージ優勝を果たした際、サンフレッチェの攻撃には明確な形が存在した。ポストプレイに長けた高木琢也に対し、圧巻の打点を誇るイワン・ハシェックが絡み、両サイドからはノ・ジョンユンとパベル・チェルニィが圧倒的な推進力で突進してくるスタイルだ。現代のサンフレッチェのサッカーは当時より遥かに洗練されているが、ゴール前へエゴイスティックに襲いかかる野生的なパワーという意味では、当時の前線に一歩譲るのかもしれない。
中盤に必要な「老獪さ」と、変幻自在の3バック
いや、敢えて言うならば、前線の迫力を後ろから支える「中盤の老獪さ」こそが、いま最も買い足すべき要素なのではないか。中島洋太朗のプレイは極めてエクセレントだが、まだ好調時と不出来な時の波が大きい。松本泰志、川辺駿、そして川村拓夢も含め、全員が極めて質の高い優秀なミッドフィルダーであることは間違いない。しかし、試合展開を完璧にコントロールし、相手の嫌がる場所を突く「老獪さ」という点においては、まだ成長の余白を残している。かつての風間八宏のように、ピッチ上のテンポを支配し独特の空気感をもたらす司令塔が鎮座すれば、チームの強さはより増していくはずだ。
一方で、現在のサンフレッチェが持つ最大の強みと課題を同時に体現しているのがDF陣である。佐々木翔、荒木隼人、塩谷司で構成される3バックの連携は、もはや変幻自在の域に達している。特に塩谷の予測不能なオーバーラップとビルドアップは、相手守備陣を混乱に陥れる絶大な効果を発揮している。それだけに、前線がこの後ろからの押し上げに連動して爆発してほしいと願うと同時に、彼らベテラン陣の後継者をいかに育成していくかという世代交代のテーマへと立ち返ることになる。
今週はミッドウィークにホームでのグランパスエイト戦、週末にアウェイでのファジアーノ戦と過密日程が続く。グランパスは天皇杯でガイナーレ鳥取に不覚を取ったとはいえ、地力のある難敵だ。ミシャも当然入念なサンフレッチェ対策を仕掛けてくるだろう。またファジアーノに対しては、ルカオへの徹底対策を講じた上で、絶対に勝ち点を落としてはならない。
負けていないとはいえ、ドローの連続では勝ち点は伸びていかない。この連戦では最低でも勝ち点4、欲を言えば連勝で勝ち点6を積み上げたいところだ。猛暑の中での過酷な戦いとなるが、リーグ戦の上位戦線に踏みとどまり、9月29日から始まるヤマザキルヴァンカップを勝ち抜くためにも、層の厚みを増しながら確実に勝ち点をもぎ取っていくタフさが求められている。
ドローで良しとするぬるま湯を脱し、過密日程のなかで貪欲に勝ち点3をもぎ取り続ける強かさを示せるか。セブ依存の脱却と世代交代という宿題を抱えながらも、頂を見据えて着実に歩みを進めるサンフレッチェの、真価を問う戦いはここからが本番だ。
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