観客動員数2万1360人——。スタンドの寒々しい空席が示すのは、チームの失速以上に深刻な、ライト層の「完全な沈黙と冷淡」だ。連勝の裏で繰り広げられたのは、相手のミスに救われただけの「ヒーローなき勝利」。エトミデート疑獄の清算すら曖昧なまま、勝利への執念を棄てた組織が叫ぶクライマックスシリーズ争いの虚しさ。勝利を真剣に追求するサンフレッチェの姿と対比させながら、「勝ちを目指さずに利益を得る」という傲慢なビジネスモデルの終わりの始まりを皮肉混じりに描く。
ガラガラのスタンドが映し出す、ライト層の静かな離脱
試合の具体的な内容に触れる前に、まずは現実の数字を直視しなければならない。今日の入場者数は、ついに2万1360人という低水準へと落ち込んだ。スタンドのあちこちに広がる空席の惨状から察するに、実際の入場者はその6割か7割程度だったと見るのが妥当だろう。昨日の試合自体はそれなりのカタルシスを覚える展開であり、リーグ全体のレベルはさておき3位の背中が見えている状況だ。つまり、チームの直近の成績不振だけが客足の鈍化を招いているわけではないことは自明である。
確かに、そろそろ夏休みも終わりに差し掛かる時期であり、残暑どころか酷暑がぶり返してきているため、動員に悪影響を及ぼす要素がないわけではない。しかし、昨日の今日で発表数値を4000人以上も減らさざるを得ない点に、今のカープが置かれた哀しい現状が透けて見える。要するに、ライトなファン層はすでに完全にシラけきっているのだ。エトミデート疑獄に対する自浄能力のなさ、そして「どうせ最後は負けるのだろう」と見透かされたやる気のなさが原因であることは、想像に難くない。
お立ち台に立った髙太一は「お客さんが少なくても、来てくれる一人ひとりのために投げる」という旨を口にしたが、これはある意味で逆効果だろう。コア層がすがる「選民思想」を心地よくくすぐるだけで、ライト層を余計に遠ざける口実になりかねない。それにね、髙太一君。「見に来てくれる一人ひとりのために頑張る」なんて胸を張って口にしてはいけないよ。プロとしてそんなことは当たり前の前提なのだから。
それはさておき、今日の試合である。一言で言えば「ヒーローなき勝利」と呼ぶにふさわしい内容だった。決勝点は宮下朝陽のトンネルであり、その後は「不浄の点など要らぬ」と言わんばかりに、巡ってきたチャンスを熨斗付きで返上する始末。思い返せば序盤も、相手先発の東克樹がアップアップだったにもかかわらず、丁寧に応急処置をして薬まで与えてマウンドに返した趣があった。本当によく負けなかったものだと思う。昨日の試合にそれなりの見所があったとするなら、今日はそれすら存在しない。実につまらない野球を見せられたという印象だ。
「ヒーローなき勝利」と、CS圏内という名の滑稽な狂言
今日のヒーローに鈴木健矢が選ばれたのは当然として、実質的な殊勲甲はフレディだろう。グダグダのグズグズになりつつあった展開、かつカープ打線のダラダラとした重苦しさが目立った試合をピシッと締め上げた。あまり球速が出ないとされる市民球場で158km/hを計測し、相手の中軸に一切仕事をさせなかった。だから最初からフレディをリリーフに回せばよかったのだ。
結果として、これで借金10以上を抱えた4チームが1.5ゲーム差内にひしめき合い、クライマックスシリーズ進出圏内の3位を争うという空前の椿事となった。カープは3位ベイスターズより消化試合数が4つ少ないため、1.5ゲーム差などあってないようなものだ。ここまで来たら足を引っ張り合うのは醜いばかりである。然るべきタイミングで抜け出し、せめて借金を5以内に収めたいところだ。
しかし今のカープが、胸を張ってCS圏内に入ると言えるだろうか。どうしても今の組織が堂々とCSに出る姿など想像できない。はっきり言って、不祥事を清算することもできないチームに日本一をかけて戦う権利が与えられるなど、野球という競技に対する重大な冒瀆ではないか。そんな横暴を、野球の神様が許すとは到底思えない。
本気の勝利が示す価値と、崩壊する「ビジネスモデル」
話を転じると、今日はサッカーの天皇杯2回戦があり、サンフレッチェ広島は沖縄SVを4-1で下した。終わってみれば危なげない勝利だったが、嫌な形で先制を許した時はヒヤリとさせられた。過去の「おこしやすの悲劇」が頭をよぎったからだ。沖縄SVは県予選で琉球FCを破り、1回戦でもギラヴァンツを下して不気味な勢いを持っていただけに、穏当な結果に終わって胸を撫で下ろしている。
もっとも、その失点シーンはまたしても荒木隼人のオウンゴールであった。公式戦の失点3のうち2つが荒木によるものというのは、単なる偶然なのか、それとも明確な理由があるのか。ここは早急に原因を詰めておく必要があるだろう。そうしなければ、今後の相手は荒木の裏へ露骨にロングボールやクロスを放り込んでくるはずだ。荒木の強みである高さと強さが諸刃の剣となっては困る。
それでも、やはり「勝利」というものを真剣に目指して戦う姿は尊い。カープが広島市民・県民からそっぽを向かれつつある一方で、サンフレッチェやレジーナ、ドラゴンフライズやイーグレッツ、サンダーズといった他競技へ人々の関心が移っていけば、松田元が心を砕いて作り上げてきた「勝ちを目指さずに利益を得る」ビジネスモデルが根本から敗北することを意味する。いっそそうなってしまえば良いし、歴史の必然としてそうなっていくべきなのだ。
白けたスタンドと不浄の勝ち星の陰で、ファンが求めているものの本質が静かに浮かび上がってくる。プロスポーツの尊厳とは、勝利に向かって愚直に汗を流す姿にこそ宿るはずだ。自浄能力を失い、歪んだ経営に胡坐をかく組織が衰退し、真摯に勝利を追う競技へと人々の熱量が移っていくこと——それこそが、野球の神様が下す至極当然の裁きであり、至高の報いにほかならない。
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