歌が消耗品になった世の中で

おもひで

地上波のテレビがことごとくくだらない上に、さらに輪をかけてくだらない特番などしているのに辟易した私は、偶然見つけたBSテレ東の歌謡ナイト2025を見続けている。なんといっても昔の歌の見せ方はテレ東のお家芸だ。しょうもない番組見るよりおなかいっぱいになっているところだ。なんといっても、過去の映像が見られるのがよい。映像の中の歌は、老いも劣化もしない。

これを見ていると、昔の歌手の基礎力、鍛え込み方の違いがよく分かる。戦前や戦後すぐに活躍した歌手の映像はもちろん年を取ってからのものしかないのだが、経年劣化こそあれ乱れというものがない。藤山一郎や淡谷のり子はその両巨頭だろう。クラシックの基礎を叩き込まれているから、年取っても歌の乱れというのがない。淡谷のり子が晩年最近の歌手に厳しいことを言ったのも、至極当然なのである。

特に現代に近くなるほど、鍛え込み方の違いというのがもろに出てくる。誰が駄目になったかというのは名誉のために言わないこととするが、やはりクラシックの基礎を叩き込まれている菅原洋一翁は素晴らしい。卆寿を過ぎてなお舞台で歌えるのはさすがと言うほかない。もちろんそれなりに老いてはいるのだが、八十代まで矍鑠と歌っていただけのことはある。

何もクラシックばかりよいというわけではない。三波春夫や,村田英雄ならば浪曲、三橋美智也や細川たかしなら民謡というベースがあった。そうでなくても、伊東ゆかりや由紀さおりのように子どもの頃からしっかりベースが鍛えられている人は、やはり違う。出自はともかくとして、しっかりとした基礎が出来ている人は、長くその価値を保ち続けることができるということなのだろう。

いや、基礎だけではなく、しっかりと歌い続けることもまた必要なんだろう。不思議なもので、歌を捨てた歌手は、途端に駄目になる。現にやしきたかじんはそうだった。あえて今テレビで見ている中で名前を挙げると、小柳ルミ子なんかそうかもしれない。彼女は宝塚音楽学校首席卒業であるし、デビュー当時の清楚さと全盛期の艶っぽさはさすがだったのだが。

そう思うと、最近粗製濫造されている自称アーチストのそれなんて、聴くに及ばないといっても言いすぎではないだろう。ほとんどが素人カラオケ芸の延長でしかないのだ。だから、声が出ているうちはよいが、声が出なくなったらゴミ以下だ。しっかり鍛え込んだはずの歌手でさえ、老いに抗えない場合があるのに、そうでない人が年取ったら、まあ聴くに堪えまい。

素人の私が言うのも何だが、年を取ると絶対に高音が出なくなる。だからみんな若い頃の歌を年取ってから歌うと苦しそうにごまかしながら歌う。それをいかに見せないかというがプロの矜恃なんだろうと思っている。昨年の紅白でB’zやTHE ALFEEが注目を帯びたのも、その点がある。変な言い方だが、歌手にとって長命というのは必ずしもいいことではないのかもしれない。お嬢や裕ちゃんは、老いを見せなかったから伝説になったという側面もあるのかもしれない。

話が逸れたが、鍛え込んでないお手軽歌屋さんが粗製濫造された最大の下手人は秋元康であると思う。秋元康の作詞家としての腕は否定はしないし、お嬢を一発で参らせたほどの太い歌詞を書く人なのだが、プロデューサーとしては三流だ。というより、年端もいかない若い女の子を引っ張ってきては実験台にしている趣がある。そういうのに宛がわれる歌の歌詞は、安っぽいというか、薄っぺらいというか。

そういう反動からか、聴くも歌うも邦楽一本槍だった私が、少しずつ古い洋楽を聴くようになっている、ある意味評価が定まったものが来るのだからよくて当たり前なのだが、Elvisなんか実に表現力が多彩だし、歌うジャンルも広いし、声も艶っぽいし、そりゃ売れただろうという気がする。そうえばElvisもまた老いを見せる前に天上界に行ってしまったんだったっけ。

あとはベタだが、やはりThe Beatlesはよい。そりゃあれだけ曲があったら耳に合う合わないはあるけれども、いちいち説得力があるのだ。それに、いかに邦楽はThe Beatlesの影響を受けていたかというのがよく分かるのである。ドリフターズがThe Beatlesの武道館公演の前座を務めたことを知る人は多いだろうが、ドリフの昔の歌にはThe Beatlesの影響が聞こえる。

何度も書いてきたが、亡母はもっと歌というものの評価に厳しかった。松田聖子など出てくる度に「ヘタクソ」と評していたものだが、幸か不幸か私もその価値観を植え付けられて育ってしまったきらいはある。そういう拗ね者の戯言と思っていただければ、十分だ。別に言いたいことはそれ以上でも以下でもない。

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