最近の人には好角家しかわかってもらえないかもしれないが、昭和の時代に富士櫻というお相撲さんがいた。元北陣親方の麒麟児関との壮絶な突っ張り合いを覚えておられる方も多いだろう。最高位関脇で三役もそれなりに務めたが、とにかく取り口は突き押し一本。実力は三段目、四つに組めば序二段などと評されたくらいである。
その番付を支えたのはとにかく稽古。とにかく番付が上の者が一番稽古をするのだから、下の者はそれに引きずられる。高砂部屋を中心とした当時の高砂一門の隆盛は、彼によるところ大きかったかもしれない。ちなみにその後千代の富士、北勝海を輩出して隆盛を極めた九重部屋は、高砂一門である。
とにかく、負けたら常に「稽古が足らない」。一切の言い訳をしなかった。もちろん運が悪かった結果もあっただろうし、そもそも合口の悪い相手もいただろうが(例えば対龍虎戦は0勝6敗)、そんな言い訳がましいことは言わなかった。とにかく稽古、稽古である。またそうでなければ三役を10場所、金星6、三賞8などという成績を残せやしまい。
別に富士櫻関だけでなく、また角界だけでなく、強くなる人、上に昇り詰める人はみんなそうだろう。結果が出なかったことに対する言い訳をたらたらするような人が、強くなって然るべき地位を占めるわけがない。まずはひたすら自分の力と向き合うからこそ、強くなれるのだと思う。
ところで、今日サンフレッチェの3冠への挑戦が終わった。もちろんルヴァンカップは制したが、リーグ戦も天皇杯もあと一歩ですり抜けた。特に今日の天皇杯準決勝のヴィッセル戦は悔しさの極致のようなものだろう。後半投入のトルガイが思ったほど機能せず、大迫が取られたPKもいささか微妙だった。しかも止めたにもかかわらずやり直し。最後ボールを蹴り上げた大迫の表情がすべてを物語っている。
しかし、敗北の結果に対しては一切の言い訳はできないし、微妙な判定も理由にはならない。そんなことをしていたら来年度はタイトルどころか降格争いが待っている。まだ選手の声は分からないが、少なくともSkibbeは一切の言い訳をしていない。そのくらいプロフェッショナルの彼にとっては自明だからだろう。
それに引き換え赤い帽子のチーム。とにかく聞こえてくるのはエクスキューズばかりである。選手も組織も、そしてファンも。だから駄目なんだと言えほかない。私に言わせれば、かつて出羽錦忠雄翁が解説で言っていた、単なる稽古のブソクである。
そう言えば、カープは練習量はやっているという抗弁が出てくるかもしれない。しかし、はっきりいうなら、間違った練習、理屈にあってない練習なんて意味あるのかい?というほかない。昨年秋季キャンプからの一連の練習は、やっぱり間違ってたんだよ。それを認めることから始めないと、来年は当たり前のように最下位になる。
さらにいうなら、カープはファンも選手も敗北ということに寛容すぎる。敗北というのは一定数は受け入れなければならないものではあるが、ペナントレース143試合、負けてもいい試合なんて存在しない。これを理解できない向きが多すぎる。だから必死に藻掻いて勝ちを取りに行けないのだ。今のカープは、負けても仕方ないよね、あははははと最初から笑っているようなもので、これでは優勝なんてとてもとても。
今のカープに必要なものは、負けてたまるかという気概と、正しい努力である。これがカープの勝てる球団から決定的に劣るところだ。そんな当たり前のことを言わねばならないほど、カープは堕落している。ついでにいうと、正しい努力の結果が高パフォーマンスに結実できる選手を集めることもそうだ。これも今のカープに決定的に足りていないものだ。まあ、必死に真鍮をもって金となし、ガラス玉をもってダイヤとなすチームには、無理かな。
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