昨日の締めに引用した子規の一節だが、歌よみを「カープファン」、和歌を「カープ」に置き換えたら、まさに現状にぴったりのような気がする。まさに子規がぬるいサークルの現状を喝破しているかのようだ。そう言えば子規は野球好きでも有名なのは周知のとおりである。もちろん令和のヒロシマ球界など射程外だろうが、きっと天上界で苦笑いしているに違いない。
現状の大多数のカープファン、しかもその多くは「善意」のファンであるわけだが、彼らの言動に対する違和感については何度も記事に認めた。その言動の根底にあるのは、昨日の子規の一節の如く、カープが常にナンバーワンであるといううぬぼれだろう。カープのこと以外は、いや実はカープのことだってまったく知らないことも共通している。だから、カープの問題点すら好ましく語るのであって、始末に負えない。
今のカープの問題点は、間違いなく火力不足である。いや、はっきり言えば戦力不足、一軍で試合に出るだけの戦力が不足しているといわざるを得ない。でも、それすら誇りに変えるのである。敢えて名指しするが、矢野とか羽月とかが戦力であるかのような妄想を堂々と口にするし、上本なんて不動のレギュラーかのように扱うから始末に負えぬ。どうりで野間なんぞが持ち上げられるはずだ。
申し訳ないが、よそのチームのファンから見たら、笑止千万だろう。あんな非力なチビどもになにができると鼻で笑われるのがオチだ。しかし、そこはまさにもの知らぬことの強みである。自分たちの狭いサークルの中で固まってそういう批判を耳に入れないのである。そしてカープファンが批判を口にしようものなら、反社風情を使ってそういう批判を封じようとさえする。アホかとしか言えないが、そうとだけは言っておれないのが悲しいところである。
なぜなら、そういうファンを巧妙に操っているのが、他ならぬハジメだから。
ハジメは莫迦じゃないから、現状に対して批判が出ることは重々承知の上だ。だから、さまざまなプロパガンダを弄してだまくらかそうとする。もう私もさんざん取り上げたところであるが、曰く、「カープは資金力に限りのあるチーム」、「カープの伝統は機動力野球」、「投手を中心に守り勝つ野球」、などなど。しかし、すべて嘘であることはもう私が解き明かしたところである。
でも、いまだに彼らはそういう嘘に凝り固まっている。仕方がない。もはや彼らの思いは宗教的情熱のようなものである、まさに鰯の頭も信心から、信ずるものは救われるの境地なのだろう。しかもその根底には前述の通りカープがナンバーワンであるといううぬぼれがあるから、なおのこと信心に熱が入るのだろう。これはある意味人間の自然な熱情のようなものと思えるのであって、だからカルトが成立するのである。
「貫之は下手な歌よみにて『古今集』は下らぬ集に有之候。その貫之や『古今集』を崇拝するは誠に気の知れぬことなどと申すものの、実はかく申す生も数年前までは『古今集』崇拝の一人にて候しかば、今日世人が『古今集』を崇拝する気味合は能く存申候。崇拝してゐる間は誠に歌といふものは優美にて『古今集』は殊にその粋を抜きたる者と存候ひしも、三年の恋一朝にさめて見れば、あんな意気地のない女に今までばかされてをつた事かと、くやしくも腹立たしく相成候。」(正岡子規『再び歌よみに与ふる書』(1898年2月14日付け))
繰り返すようだが、貫之をハジメ、古今集をカープに置き換えると、まさにぴったりだ。もっとも私は最初からハジメを崇拝したことなどないが。また、子規はこうも言う。
「先輩崇拝といふことはいづれの社会にも有之候。それも年長者に対し元勲に対し相当の敬礼を尽すの意ならば至当の事なれども、それと同時に、何かは知らずその人の力量技術を崇拝するに至りては愚の至りに御座候。」(『十たび歌よみに与ふる書』(1898年3月4日付け))
ハジメ批判をすると、とかくオーナーに楯突くなというあほうがボウフラのように湧いて出てくるのであるが、そんなの話にならない。結局子規の言うとおり権威崇拝に堕しているに他ならないのであるから。
今の私はこれらを書いたときの子規ほど若くないが(そもそも子規は三十五で夭折している)、その熱意は若き子規の勇み足に負けない自信はある。いや、負けておられない。子規が相手にしたのはもはや振るわなくなった歌壇であるが、今から相手にしなければいけないのは、旧統一教会も尻込みするような最強のカルト集団である。それ以上の熱意をもって戦わなければなるまい。なに、子規と一歳違いで同時代の文壇を飾った北村透谷は、こう言っている。
「真摯の隣に熱意なる者あり。人性の中に若し「熱意」なる原素を取去らば、詩人という職業は今日の栄誉を荷うこと能はざるべし。すべての情感の底に「熱意」あり。すべての事業の底に熱意あり。若しヒューマニチーの中に「熱意」ななるもの無かりせば、恐らく人間は歴史なき他の四足動物の如くなりしなるべし。」(『熱意』(1893年6月))
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