冬の京都なら、少しばかり人も少ないだろうか。

あまからAvenue

確かに京都と言えば人の多いところだったが、私が住んでいたころは、バリバリの観光地以外はそうでもなかった。しかし、今年10月に赴いた際の状態は、以前も書いたところである。これぞオーヴァーツーリズムの弊害と思いたくなった。いや、あそこまで行けば立派な観光公害だろう。住んでいる人は迷惑だろうし、正直なところあれではかつてのように何の用もなしにふらりとというわけにはいかなくなった。些か寂しい。

しかし、私の経験上、確かに冬の京都はそうでもなかった。なかったといわざるを得ないのは今そうかどうかは保証の限りでないからだが、確かに故宮脇俊三翁もこう書いておられるところである。

その点、一二月の京都はいい。修学旅行や団体旅行がいない。なによりも、あの鉤鼻のアメリカ人のおばさんたちの集団にめぐり会わぬのがよい。大晦日を除いては、さしたる行事もなく、一般の観光客も少ない。(「汽車旅12ヶ月」)

ただし、これも1979年に書かれたものだから、もう44年前のことになる。だいたい私が住んでいたのももうおおかた30年前だから、状況は大きく変わっているかもしれない。少なくとも今の観光客は、春の桜や秋の紅葉を愛でたり、京都の年中行事に興味があってきているようではないから、なおのことそう思う。むしろそんな「京都らしさ」が人を呼んでいるわけではなさそうなのである。

などと長々と書いたのも、来年の2月頃、家人とともに京都に行こうという話が上がっているからである。京都に行くと行っても、正直今から京都のホテルを取るのも難しく、宿泊は大阪になるかもしれない。でも、京都の空気に触れるだけでもいいのである。といいつつ、行きたいところは山ほどあって困るのであるが。ただ、もう過去帳入りした名店も多いけれども。

とりあえずこのたびは朝と昼を食べることになりそうだが、朝は河原町三条の「進々堂 三条河原町店」で決まりになりそうだ。ここは以前書いたとおりモーニングでおかわり自由のパンがある。コーヒーだけで楽しむもよし、スープ付きで楽しむもよしで、老舗のパンを心ゆくまで味わえる。進々堂と言えばかつて京大北門前店にはずいぶんお世話になった。

昼をどうするかは今決めかねているところで、ひとつは以前夜を食べに行った「てらまち 福田」である。前回はコロナ禍のせいで酒と一緒に味わえなかったから、その楽しみが残っているのだ。しかしこのたび心動いているのは、精進料理である。精進料理や湯豆腐というのは専門料理店で食べるととんでもない値段がするが、石庭で有名な龍安寺の塔頭である西源院ではリーズナブルな値段で湯豆腐と精進料理がいただける。そこを狙っているのだ。

こういう思案というのは、非常に精神衛生上良い。思えば今年もあと2週間あまりとなり、我が家でも迎春準備などしなければいけない。しかし、そんな雑事などもはやどうでもいい。本業もこれからばたばたするのだが、これまたこんなもの知ったことかと思う自分がいる。クリスマス?私にはもうかれこれ数十年サンタクロースは来ない。ぜひ国立印刷局の手による福澤諭吉翁の肖像画入りのカードを何百枚と欲しいところだが。

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