ホンモノの味。

元帝国ホテルの料理長の”Monsieur”村上信夫翁が書いたエッセイ(所収されていた書名は忘れた)の中に、「白のスパゲティ」の話がある。かつて帝国ホテルを住処としていた「我らがテナー」藤原義江翁が好んで食されていたものだ。要するにオリーブオイルを熱してニンニクを潰したものを炒め、アルデンテに茹でたパスタの上に白トリュフをスライスして合わせたものである。まさに美食を行き着いた人が好むような料理であるが、さすがに今では帝国ホテルでも出せないらしい。まあ、白トリュフなんてとんでもない値段がするからやむを得まい。

もちろんこれはかなり突飛な例かもしれないが、それにしても一流の手にかかると単純な素材でも然るべき逸品になる例だろう。もちろんオリーブオイルは最上級かつ新鮮なもの(藤原義江翁は常にオリーブオイルの缶をチェックされていたとか)、パスタはデイ・チエコのものという指定があったそうである(これなら今は我々でも手に入る)。要するに、最上級のものに最上級のものを足すわけだから、これはきっとうまかろうという気がする。味の想像はつかないが。

一方で、辻静雄翁のエッセイ「舌の世界史」に、こんな話がある。フランス料理の基本のソース・エスパニョール(茶色いソース)について、本格的に手をかける方法で作ったソースと、手抜きソースを作って料理人の卵に比べさせる実習があるらしい。最初は料理人の卵たちも味の差なんて理解できないらしいのだが、やがてどんな過程でどういう手を抜いたかが分かるようになる。そして、次の一節。長いが引用する。

「手をかけたソースの味を知らない人は、比較するだけのおいしい方のソースの味を身につけていないわけだから、フランス料理の門外漢がどこの店のソースがおいしいとか、どこの料理がおいしかったからと言ったところで、私どもにとっては何の参考にもならないわけで、少なくとも専門にこうしたソースを作っているコックさんの舌をたぶらかすことはできないことである。」

「白いスパゲティ」の話に戻ると、実は似て非なるものなら我々にもできる。ディーン&デルーカには白トリュフフレーバーのオリーブオイルがあるので、オリーブオイルで和えたパスタにそれをかければきっと似たような味になるだろう、同じくディーン&デルーカに売っている黒トリュフ塩で味付けすればなお良い。いや、今やトリュフ塩はダイソーにもあるから、もっと簡単だ。ちなみにダイソーのトリュフ塩を腐す気はなく、ローストビーフの下味や焼き豚の漬けだれに重宝している次第であるが。

で、話を展開すると、我々世代のカープファンは、いわばMonsieur KOBAによって最上級の味を楽しませてもらったのである。しかし、それをいっぺんに崩したのがハジメだ。彼は古葉イズムをすべて放逐し、あたかもグレードの低い素材の手抜き料理でファンを騙すことに狂奔した。そしてやがてカープファンは「手をかけたソースの味」を知らない向きばかりになり、手抜き料理を提供されてもなんとも思わなくなってしまった、といってもいいだろう。

そんなことを思ったのも、今のカープ、ホンモノの一流という選手が少ないからだ。だいたいそういう選手に金を払わないからやむを得ない。その上に、もはや腐った素材やら出涸らしやらそもそも成熟してない素材やらはては素材として不向きなものを厚遇しているといわざるを得ない。上本、野間については昨日までに書いたところだが、今日は田中広輔と5000万円で契約更改したというのを見て唖然とした。話にならない。

しかし、残念ながらバカープファンは理解してくれない。彼らは手抜き料理どころかジャンクフードで三食賄っているようなものだ。このくらいになると、超一流のホンモノの味なんて理解できないのだろう。だから、今カープに跋扈してるような腐ったような具材で満足してしまう。そして、やがてそれをホンモノを求めるファンに暴力的に押しつける。ほんと、腐った料理に中って死んじまえばいいのに。

ずいぶんと長文になってしまったし、いつもにまして棘のある文章になってしまった。まあよい。「何年経っても丸くならぬ我が野心」で突っ張るつもりだ。

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コメント

“ホンモノの味。” への1件のコメント

  1. アングリーレッドのアバター
    アングリーレッド

    >「もちろん優勝というのは当然そこを目指してやっていくんですけど、今年以上に応援してくださるみなさんを楽しませたいなと、わくわくさせたいなと思っています」

    呉でのトークショーでの新井監督のコメントだそうだが、何で「日本一」目指すって言わないのかな~(涙)
    そしてファンを「楽しませたい・わくわくさせたい」のなら、来年スタメンで、
    センター   野間
    レフト    大盛
    サードor一塁 田中広輔
    ショート   矢野
    セカンド   羽月
    キャッチャー 會澤翼
    なんか絶対しないで欲しいよね。
    「わくわくして楽しむ」のは、お金かけずに済んだハジメと、おこぼれに預かる奴の息のかかった者達だけ、なんて許さないからね。

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