今日は5月3日、1947年に日本国憲法が施行された日である。毎年この日を期して柄にもないことを書いたりしたのだが、今年も書いてみることとする。もっとも、今日の話はあるWeb記事にインスパイアされたところがあることをあらかじめお断りしておく。
毎年憲法記念日前には、三権の長の一角である最高裁判所長官が記者会見をする。今年も例によって今﨑幸彦長官がそれをしたわけだが、再審法制とかデジタル化などという話に紛れて、次のような言葉があった。以下引用する(引用元:毎日新聞デジタル。ただし太字は筆者)。
「裁判所には、社会秩序に安定をもたらし、法の支配を揺るぎないものとすることが求められている」
一見当たり前のように見えるが、実はかなり危うい。そもそも憲法上裁判所にそんなことを求められているかという問題があるのだ。そしてこれは、日本の通説的憲法学が裁判所というものを真剣に取り上げてこなかったツケといっていい。
結論から先にいうと、裁判所が「社会秩序」というものを口にするのは、違う。というより、危険だ。そもそも守るべき「社会秩序」というのは、誰にでも一義的に決まるものではない。裁判所だって国家権力である以上、畢竟国家にとって都合の良い「社会秩序」の守護者になってしまいかねないのである。
この辺、通説的な憲法学、それこそ故芦部信喜以来の憲法学は、裁判所の役割を積極的に解き明かしてこなかった。そこに単純な司法府への信頼があったのかどうかは分からない。しかし、あまりにも素朴すぎた。だから権力に対するインパクトを持ち得なかったと思う。
その点佐藤幸治博士はそのような雑駁な議論に與せず、裁判所に「法」(「法律」でないことに注意)の原理による、非「政治」的、非「権力」的な機関という役割を与える。なかなか佐藤幸治博士の議論はその透徹した文章ゆえにとっつきにくいところがあるのだが、興味のある方は博士の著書で確かめていただきたい。
話が些か逸れたが、どのような見解を取るにせよ憲法上裁判所には司法審査権が与えられ、法律や処分を違憲とすることができるのは、憲法上裁判所に国民の権利擁護としての役割が期待されているからなのだ。残念ながら「社会秩序の安定」ということは、それに劣後するどころか、積極的に言ってはならなかったことであると思う。
そう思うと、今回の長官コメントは裁判所、ことに最高裁判所の劣化を示すものとして受け止めなければなるまい。きっとこのコメントの回答案は事務総局が作ってるんだろうから、これに違和感を感じない程度の裁判官や一般職が最高裁の上の方にいるということである。もっと言えば、あまりにも安易に秩序維持に傾いたということは、最高裁判所当局と復古主義的保守との結びつきの強さを示すエピソードともいえる。
まだまだこれに関連して書きたいことはあるが、そろそろ長くなってきたので、やめる。この連休中に続編が書ければと思っているところだ。






コメント
憲法学について門外漢の質問に応える場ではないし義務もない、と撥ね付けるのは想像に難くないが、疑念を抱いている案件を挙げると。
{裁判所が「社会秩序」というものを口にするのは、違う。危険だ。}と、安易に秩序維持に傾くことを危惧されておられるのは分かった。一方、検察官が「社会秩序」を乱している案件がやたらと多いが・・・近年、曰く付きの重犯罪を検察官が不起訴を乱発する背景は何?これは、憲法学とは関連性がなく専門外ですか?
取り分け、中国人による重犯罪(悪質な死亡事故等々)を不起訴にし野放しにし「社会秩序」を著しく乱している。
また昨年9月、財務省の公用車を運転中に、永田町の国会前で人をはね死亡させた運転手の男を不起訴処分にし、非難が殺到している。死亡した被害者が、かつて大手金融機関の不正取引を告発した人物で、財務省が関係しているとする『長期保護管理権委譲渡契約方式資金』に関する資料を持ち歩いていたという。『この資金に関する管理契約をすれば、政府の極秘資金を使えるようになる』という、典型的な詐欺話の資料で、死亡した被害者は、この詐欺に財務省幹部が関わっていると疑っていて、実際、証拠だという資料を記者が視認確認している。その付帯資料に財務省の大物OBの名前が載っていた、と。検察官は完全スルーですねえ。
裁判所と検察官の役割が異なることは百も承知の上申し上げると「社会秩序」が乱れているのは事実。近年、どこの国の輩やねんというほど法曹三者は劣化し、リテラシーが低いと感じているが、長文を投稿されている憲法学の「プロ」として、どのように捉えておられますか?
ま、スルーでしょうねえ(笑)。
>「八百長プレイで グラウンドを汚すプレイの恥ずかしさ♪」
タイガースファンがジャイアンツの「闘魂込めて」を揶揄して替え歌した「商魂こめて」の歌詞だそうだ。
タイガースファンの機転に苦笑しながらも、よく考えたら歌詞の内容、まんまハジメのカープの事じゃないか!
「鍛え抜かれ~た 精鋭の業と力~♪」
などと嘘だらけの“それいけカープ”よりよっぽど今のカープにふさわしい歌詞。
不甲斐ない負け試合を見せるマツダスタジアムで大合唱したいが、ハジメ直属の警備員の姿をしたチンピラにつまみ出されるのがオチか・・・(涙)