NPB通算3085安打という金字塔を打ち立てた偉大な球人・張本勲氏がこの世を去った。厳しい言葉の裏に深い愛情と故郷・広島への思いを秘めていた大先輩の訃報を悼み、その歩みを静かに回想する。
だが、今日も下された雨天中止と、混迷を深めるチームの現状。生半可な「喝!」すら生ぬるい崩壊劇の裏で、9月16日にはエトミデート疑獄のキーパーソンである売人の初公判という決定的な「決算の時」が迫っている。不都合な真実と球団の隠蔽体質を冷徹に突き刺す手記。
偉大な安打製造機の訃報と、「喝!」の裏にあった温もり
すでに報じられている通り、「安打製造機」と称された張本勲翁が亡くなられた。NPB通算3085安打。日米通算記録ではイチローに更新されたものの、彼が日本プロ野球史に打ち立てた金字塔は未来永劫色褪せない偉大な記録である。そして言うまでもなく、広島が生んだ球史に残る巨星であった。晩年は被爆体験を伝える語り部としても精力的に活動されていた姿を思うと、まだ語り遺したいことが山ほどあったのではないかと悔やまれてならない。
もっとも、選手としての現役時代をリアルタイムで知るファンは、私と同世代かそれ以上の年代に限られるだろう。私自身、記憶にあるのは読売ジャイアンツの3番として君臨した、いわゆる「OH砲」の晩年期に過ぎない。東映フライヤーズ時代の凄まじい打棒をこの目で見たわけではないし、「OH砲」の全盛期自体も決して長くはなかった。やがて王貞治も張本も衰えを迎え、王の現役引退と張本のオリオンズへの移籍によって、一つの時代が静かに幕を閉じたのである。
大半の野球ファンにとって、張本氏のパブリックイメージは『サンデーモーニング』における「御意見番」であり、「あっぱれ!」と「喝!」の人だったのかもしれない。その辛口な見立てには賛否両論があったものの、あれほど分け隔てなく、毅然と大人として「叱れる」人物が現在の球界から消えてしまったのは紛れもない事実だ。怒るのは容易だが、叱るという行為には対象への深い愛がなければ成り立たない。安仁屋宗八氏が語っていたように、素顔の張本氏は非常に情に厚く、優しい人だったという。その逸話を聞けば、あの厳しい言葉の裏にあった温もりが納得できる。昔は少々ジャイアンツ寄りの威勢が良い語り口ではあったのだが。
張本氏とカープとの直接的な接点といえば、1976年の広島市民球場における一部ファンとのトラブル事件以外にはそれほど多くなかった。しかし晩年は、8月6日前後のJ SPORTSでの広島戦中継にゲスト解説として招かれるのが恒例となっていた。放送席での語り口は実に穏やかで、随所に故郷への思いやりが滲み出る「優しい」解説だったと記憶している。どれほど時代が移ろうとも、やはり彼は広島の地で育った一人の野球人だったのだ。
「喝!」すら生ぬるい崩壊劇と、迫る決算の時
そんな大先輩の目に、現在の惨状を極めるカープは一体どのように映っていたのだろうか。おそらく、生半可な「喝!」程度で許される内容ではない。単に結果として勝てないというレベルならばまだ救いようもある。だが、組織として勝利を目指す姿勢そのものを放棄し、選手は緊張感を欠き、あろうことか「エトミデート疑獄」という前代未聞の不祥事まで引き起こす始末だ。情けなさのあまり涙を流されたかもしれないし、もしお元気であれば、元凶である松田元に対して直接一言物申しに行かれたかもしれない。もっとも、張本氏の数々の伝説的な武勇伝を知っていれば、当の松田元は恐怖で逃げ惑うのが目に見えているが。
追悼の念に沈むこの日、またしても試合は雨天中止となった。カープの振替日程がどこにねじ込まれようと知ったことではないが、タイガース側からすれば本格的に過密日程を懸念しなければならない局面に入りつつある。もっとも、一寸先は闇だ。この予備日程が消化される頃、両球団がどのような情勢に置かれているかは誰にも予測できない。カープがここから劇的な躍進を遂げるなどという奇跡は万に一つもあり得ないが、タイガースとて昨日のような不甲斐ない戦いを続けていればどうなるか分からない。まあ、他球団の心配など私がすることではないが。
結果として、過酷な8連戦の予定は5連戦へと縮小されることとなった。残された5試合は、ホームでのベイスターズ戦とアウェイでのスワローズ戦である。本気でクライマックスシリーズ進出を目指すというのであれば、5連勝以外に道はない。……と、ここまで書いていて自身の言葉の虚しさに呆れてしまう。そんなものは夢物語を通り越して妄想の領域だ。今のチームでわずかに期待を寄せられるのは、中村奨成と佐藤啓介の二人くらいなものである。明日の予告先発は森翔平。もはや何の期待も抱きようがない。
9月16日、法廷で問われる不祥事の深淵
ところで、裁判所WEBサイトでの情報によると、件の売人の第一回公判が9月16日に行われるようだ。薬機法違反の事件でわざわざ傍聴券が配布されるスケジュールになっていることを踏まえれば、あのエトミデート疑獄に関連する人間の公判であると考えて間違いないだろう。興味の対象はただ一つ。彼が法廷の場で何を供述するかだ。特に各種WEB媒体で取り沙汰された矢野雅哉との関係性や、その他の主力選手に関する言及が飛び出すかどうかに注視したい。
もちろん、裏社会と地続きの人間が法廷で素直にすべてをペラペラと証言するとは思えない。しかし、もし何らかの具体的な供述が飛び出せば、事態は再び大きく動き出すはずだ。静観を決め込んでいたように見える捜査当局が再び動き、新たな容疑でマツダスタジアムや大野練習場、選手寮などに家宅捜索の手が入る事態となれば、球団がこれまで重ねてきた嘘と隠蔽工作は完全に詰むことになる。
その時、松田元や鈴木清明らは一体どのような弁明を弄するのだろうか。もっとも、球団当局と利害を共にし、ぬるま湯に浸かりきった在広プレスに、その事実を厳しく追及する自浄能力など端から期待できるはずもないのだが。
法廷の扉が開かれた時、これまで張り巡らされてきた保身と虚飾の言説はどれほどの意味を持ち得るのだろうか。どれほどプレスと抱き合って表面上の静寂を装おうとも、積み重ねてきた欺瞞のツケが消えてなくなるわけではない。
偉大な先人が残した誇り高き野球への敬意と、それを足蹴にし続ける現体制への激怒。9月16日、法廷で明かされる言葉の破片のひとつひとつから目を背けず、私はこのチームが迎える終焉のプロセスを記録し続けていく。
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コメント
張本勲さんのご冥福をお祈りします。
口調は厳しいけど優しい言葉でしたね。
「喝ですよ!」と敬語ですから。
「走り込みが足りないんですよ!」は
張本勲さんのいう通りですね。
今の選手達には、走り込みが足りません。
メジャーの悪影響かな?