「投手を中心に守り勝つ野球」——その使い古されたお題目を、私はこれまで球団経営者の妄執として切り捨ててきた。だが、その考察すら甘かったと言わざるを得ない。得点力の裏付けを欠いた理想論は、ただ経営陣の私物化に都合が良いだけでなく、必死さを捨てて楽な道へ逃げ込もうとする現場にとっても格好の免罪符だったのだ。自堕落な構造の「共犯者」と化したチームの罪深さを、今あらためて冷徹に解剖する。
「黄金時代」というものについての虚妄と、「守り勝つ」という甘言
私はこれまで、口酸っぱく、「投手を中心に守り勝つ野球」という理念の単独追求に対する誤りを指摘し続けてきた。もちろん、勝負の要として「守り勝つ」局面が存在することは否定しない。だが、それは本来、圧倒的な得点力を誇るチームが、より効率よく勝利を重ねるための「お作法」に過ぎないのだ。得点力という確固たる裏付けなき「守り勝つ野球」など、ただの空虚な幻想である。
歴史を振り返れば一目瞭然だ。西鉄ライオンズの三連覇、ジャイアンツV9、阪急ブレーブスの黄金期、そして西武ライオンズの栄華。かつて球界を席巻した覇者たちは、漏れなく強烈な得点力を備えていた。我が赤ヘル軍団の黄金時代も例外ではない。徹底的に打ち勝ち、相手を叩きのめす圧倒的な攻撃力こそが、三度の日本一を支えた真の骨格であったはずだ。あの鶴岡一人監督すら、西鉄の山賊打線に対抗すべく名高き「百万ドルの内野陣」を捨て「400フィート打線」へと舵を切り、1959年の覇権を掴み取った。カープ三連覇の時代を含め、打撃力こそがチームを推進する主エンジンだったことは誰の目にも明らかである。
にもかかわらず、いまのカープ界隈だけが時を止め、「守り勝つ野球」なる謎のお題目を念仏のように唱え続けている。強豪であり続けるための要素のうち、ごく一部の些末な側面だけを都合よく拡大解釈しているに過ぎない。かつて三村敏之監督が退任時に「もっと守り勝つ野球がやりたかった」と残した言葉にしても、それは高い打撃力が前提として存在していたからこその発言である。攻撃力の欠落した現状でその言葉を引くのは、ただの言い訳に過ぎないのだ。
松田元体制の欺瞞と、甘やかされた現場の共犯関係
ここまでは、私がこれまで何度も論じてきたリフレインである。しかし、私は自らの考察の「甘さ」を痛感し、ここで明確に自己批判を行わなければならない。昨日の自身の記事を読み返す中で、一つの重大な見落としに思い至ったからだ。
私はこれまで、このような邪道が広まった根源を、松田元による強権政治と「カープは資金力のない地方球団」という意図的な神話づくりにのみ求めてきた。確かに野村謙二郎や佐々岡真司といった体制に従順な「犬」、あるいは新井貴浩という「諸国民の王」がその意を汲んで采配を振るってきた側面はある。だが、緒方孝市体制の時代を思い出してほしい。現場に強い意志と覚悟さえあれば、相応の戦いを挑むことは可能だったはずなのだ。すなわち、悪の元凶が松田元にあるとしても、問題はそれだけにとどまらない。
真の病根は、現場の首脳陣やオフェンス陣自身が「守り勝つ野球」というお題目を都合よく利用している点にあるのではないか。「ピッチャーを中心に守りました。ですがあと一歩及びませんでした。また頑張ります」——そう言っていれば、ガツガツと点を奪いに行く泥臭い必死さを放棄できる。「守り勝つ」という言葉は、彼らにとって全力を尽くさず楽をして高給を得るための、実に心地よい「免罪符」と化していたのだ。
スクラップアンドビルドの覚悟と、大掃除の始まり
プロとして楽を追求し、自堕落な野球に甘んじる現場。本来なら、ファンが怒りの声をあげてこの怠惰を糺さねばならない。しかし、声だけが大きい一部のコア層がこの欺瞞を「伝統」として追認・推奨してしまっている。経営陣の暴政と、現場の怠惰、そしてファンの盲従。この三者が作り上げた自滅的なスラップスティックの果てに、カープが破滅に向かうのは当然の結末と言えよう。
松田元の強権政治だけでなく、他ならぬ選手たち自身がその構造の「共犯者」であったことを見抜けなかった自身の甘さは、深く反省せねばならない。彼らは単なる被害者ではなく、自ら進んで腐敗を許容した当事者なのだ。そうであるならば、経営陣だけでなく、この楽な環境に甘えきった現場の意識そのものもまた、等しく破壊されなければならない。
いまカープ界隈に必要なのは、上から下までの徹底的な大掃除である。仮に現在燻っているエトミデート疑獄が、この腐敗しきった神権帝国を内部から瓦解させる引き金となるならば、それは決して悪いことではないはずだ。松田元が築き上げた歪んだ構造を完全に解体し、一からスクラップアンドビルドを敢行すること。この不退転の決意なくして、赤ヘル軍団の真の再生などあり得ないのだ。
妄信に酔うファンと、楽をして甘えを貪る現場、そしてそれを統治する独裁者。この醜悪な三角関係が自滅のシナリオを完結させる前に、すべてを爆破し更地に連す覚悟が我々にあるかどうかが、いま試されている。
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