カープにチアがないのは“都合”である。

スポーツ

カープに公式チアが存在しない理由は、決して「伝統」でも「美学」でもない。もっと単純で、もっと滑稽で、そしてもっと構造的な事情がある。松田家体制が長年かけて築き上げてきたファン界隈のヒエラルキィ――その脆い均衡を崩したくないだけの話だ。軽い話題に見えて、実は全体主義的な序列文化の縮図でもある。今回はその滑稽さを、少しばかりの諧謔を添えて解きほぐしてみたい。

 他人のブログを見ない理由

私はあまり人様のブログには目を通さない。ネタが知らぬ間に被るおそれもあるし、下らぬことが書いてあれば茶々を入れたくなって余計な時間を浪費するからだ。それでも、facebookなどでシェアされていると、どうしても視界に入ってしまう。その中のひとつに、「なぜカープには公式チアがいないのか」などという記事があった。

 松田元が恐れる二つのコスト

このブログ主は明らかに体制に親和的なので、現状の目眩ましのために書いた可能性も強い。それはさておき、そんなもの私が1年以上も前に記事にしている。そこで書いたことがすべてだが、要するに松田元がイニシャルコストを嫌うこと、そして公式チアができると、松田元とその取り巻きが築き上げてきたカープファン界隈のヒエラルキィが崩れるからである。

 カープファン界隈という“人民共和国”

ライト層のファンにとっては「何それ」という話だろう。しかしカープファン界隈というのは、私が「人民共和国」だの「神権帝国」だのと比喩するように、早い話が個人崇拝に基づく全体主義体制だ。こうした社会では、崇拝対象からの序列が重視され、構成員の関心事になることは旧東欧のソヴェト衛星国家分析の常道であり、今でもどこやらの国で見られる現象だ。

 序列を誇るコア層の生態

だからカープファンのコア層、特に自称「カープ芸人」氏たちを含めれば、その内部序列は重大な意味を持つ。崇拝対象――早い話が松田元――との距離の遠近はもちろん、選手の誰それと仲が良いとか、OBの誰それに顔が利くなどということを殊更に誇る。親愛なるKarlは「貴族制の本質は動物学にある」と言ったが、コア層の思考も似たようなものだろう。

 チア選抜とルックスの現実

もうひとつ挙げるなら、チアに選ばれるためにはダンステクニックを中心とした運動能力やリズム感が問われる。しかし同程度の能力なら、ルックスがアドヴァンテージになることは容易に想像がつく。他球団チアの顔ぶれを全て見たわけではないが、少なくともフロントメンバーに選ばれる基準には入るはずだ。

 カープ女子」が抱くであろう不満

それを、コア層に分類される「カープ女子」たちはよく思わないに違いない。過度のルッキズムだとか何とか言って筋違いの非難をすることは容易に想像できる。他球団のコア層女子がチア創設にどう反応したかは寡聞にして知らないが、自分こそがカープファンの代表と思っている向きにとっては、絶対に面白くない話だ。

 素人チアでは話にならない

さらに言えば、球団が資金を投じてチアグループを要請する必要も意味もない。素人の「歌って踊れる女子」を集めてきて出来ました、では話にならない。やはりコアメンバーは然るべき養成所から引っ張る必要がある。でないと、金を払って素人の下手なダンスを見せられるだけになりかねない。

 アクターズスクールという選択肢

だったら広島にはアクターズスクール広島がある。Perfumeや鞘師里保を輩出した名門だ。事実サンフレッチェはかつてアクターズスクール出身のアイドルユニット「SPL∞ASH」を起用していた。カープだってやればいいではないか。こうすれば下手にオーディションなどやってファンの差別化と受け取られることを避けられるし、大義名分も立つ。当然アクターズスクール側も生徒拡大につながるわけだから、WIN-WINである。

 門外漢の発想も時に当を得る

もちろん私はそういう方面には疎いので、素人の浅知恵かもしれない。しかし傍目八目とも言うように、門外漢の発想が案外当を得ることもある。私はアクターズスクールに縁もゆかりもないから持ち上げているわけでもない。ただ「餅は餅屋」で、専門家の知恵を借りればいいというだけの話だ。

 イニシルコストは半年もあれば回収可能

確かに外部委託すればイニシャルコストはかかる。しかしそんなもの半年もあれば回収可能だろう。そこはカープお得意のグッズ大作戦の出番だ。チアメンバーのフォトカードなどのオリジナルグッズを作り、オリジナル応援歌をCD化するなどすれば、いくらでも回収できる。チアの存在でスタジアムの客が増えるかどうかは未知数だが、そこは頭を使って小銭を稼げばよい。それは球団の最も得意とするところだ。そうだろう。

 松田元自身がヒエラルキィの囚人か

それともあれか、ヒエラルキィの頂点にいる松田元自身が、自ら作ったヒエラルキィにがんじがらめにされているのかもしれない。近くにいる下僕たちが「チアに踊らされるファンなどけしからん」と言い出すから、身動きが取れなくなるのだろう。

結局のところ、カープに公式チアが存在しない理由は、伝統でも美学でもなく、ただの「序列維持の都合」にすぎない。だが、そんな些末な事情に振り回される球団もファン界隈も、どこか滑稽で、どこか愛おしい。
もし本当にチアができる日が来るなら、そのときはヒエラルキィの天井が少しだけ開いた証だろう。
まあ、急ぐ必要もない。
広島の夏は長いし、踊るべき人たちは、いつだって外からやって来るのだから。

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