ところで皆様は、カープ歴代の選手の中で生涯成績のOPSが最も高い選手は誰かご存知だろうか。山本浩二でも衣笠祥雄でもない。正解は森厚三。なんと2.667である。いや、上には上がいて、東急フライヤーズの塩瀬盛道とオリックスブルーウェーブのドン・シュルジーが5.000という空前絶後の記録を達成している。
と、いっても、今どき誰もこれですごいスラッガーだとは思わないだろう。3人とも投手で、打席に立つ機会が少なかったからこその「記録」である。森は3打席3打数2安打1本塁打、塩瀬とシュルジーはいうまでもなく1打席1打数1安打1本塁打である。まあ珍しい記録ではあるが、すごいレコードとは言えまい。
ことほどさように、数字というのは簡単に自分に有利なデータを作り上げることが可能なのである。私がセイバーメトリクスなるものを信じないのは、そういう点もある。数字は数字、それをどう理解してstrategyやtacticsに落とし込むかが問題なのであって、数字がすべてだったら野球ゲームと変わらない。
古い野球ファンの方には、「熱闘12球団ペナントレース」というシミュレーションゲームがあったことをご存知の方もいると思う。要するにカードゲームなのであるが、2つのサイコロを転がして出た目に対応する数字ゲームが進むのであり、そこにはその選手の1年度のデータが散りばめられているのである。
で、もちろんこのゲームの妙味は、シーズン通して活躍した選手よりも「使える」選手が出てくることである。例えば。打数が少ないけれども割合的に長打が多い選手とか、四球の多い選手とか、イニング数は少ないけどよく抑えている投手が、実際のペナントレース以上に「活躍」してしまうのである。それを良しとするかどうかで、このゲームの評価は変わるだろう。
話が逸れたが、どうもカープファン界隈にはビリー・ビーン信者が多いのか、やたらめったらセイバーメトリクスを持ち出す向きが多い。よほど「金がなくても勝てる」という言葉に惹かれるのかもしれないが、そんなのクソ喰らえだ。普通に考えて、安い年俸で獲得した選手が活躍するとしかるべき年俸を払わねばならないわけである。それを考えても、合理的なシステムとは言えまい。
ちなみに、昨日のコメントで羽月隆太郎の名前が出てきたところなので、今シーズンの羽月の成績をセイバーメトリクスの指標で分析してみよう。今シーズンの羽月は、119打席105打数31安打2二塁打2三塁打0本塁打4打点17盗塁5盗塁刺1犠打0犠飛13四球0死球29三振。ここから指標を取る。なお、数値の横の括弧内は優秀とされる数字である。なお、計算の仕方とその意味はこちらを参照されたい。
OPS:.725(.754以上) IsoP:.021(.220以上) IsoD:.067(.100以上) BB/K:.448(1.3以上) K%:.244(.150以下) BB%:.109(.120以上)
これでわかることは、頑張って四球は取りました、でも三振が多すぎますね。全体的に非力で使えませんということだ。まあ残酷なまでに非情だ。これでもなお、羽月の打撃指標が高いというのだろうか。ちなみに、規定打席に到達した小園とファビアンのそれをここから見比べられればよい。いや、小園ですら十分物足らないのだ。況んや羽月をや。
結局、羽月が自慢できるのは足だけだ。盗塁成功率.772(赤星式指標でいえば7)は十分立派だ。もっとも、羽月の場合それに現れないチョンボが多すぎるから信用できないだけだ。私の立てている仮説は、実はセイバーメトリクス観点からも間違っていないのである。
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コメント
羽月が非力なのは認めるけどそれでも今の打低時代の俊足型選手として優秀なのは事実
四球で2盗すれはツーベースと同じ
これも立派な長打、それに羽月が塁に居るだけで相手投手にプレッシャーを与え配球が限定されてホームランというケースが何度もあった
実際羽月がランナー1塁時のストレート割合はセリーグトップ
こういう数字に表れにくい付加価値もあるから例え非力でも俊足型の選手は貴重
特に投高打低で連打や長打の出にくい現代野球では阪神の近本中野のように機動力を使える選手は打線に必要
今のカープの野手陣の層で羽月の打撃の成長考えると羽月を1番もしくは下位打線のセカンドかサードでスタメン起用する価値は十分にあると思う
現アスレチックスの野球運営担当副社長を務めているビリー・ビーンは、セイバーメトリクスを重視したチーム編成を敢行し「一時」成功を収めたが、ここ10年アスレチックスは悲惨な結果で終わっている。10シーズン中7シーズンは大きく負け越しており、取り分け2022年は60勝102敗、2023年は50勝112敗と2年連続の100敗超え。セイバーメトリクスを重視してコレかよ(笑)。
前から何度も指摘しているように、セイバーメトリクスは、ある程度参考にはなるものの、大きな欠点として、対戦相手のランク付けをしていない。たとえば、160㎞超のエースから放った長打と140㎞台前半の緩い二線級投手から放った長打を、同じ計算式でカウントしてエエわけないやん。プロなら二線級投手を打って当たり前で、エース級を打ち崩せる打者が一流という理屈は、セイバーの有無に関係なく野球ファンの初心者でも分かること。
これも前から述べているが、成績の指標はセイバーより各選手を格付けする”レーティング”方式のほうがより正確だろう。
チームの指標に使われているイロレーティング(Elo rating)の計算式を改良し、選手個人用に落とし込めば簡単に完成する。
競馬の競走馬も明確にレーティングで格付けされているし、何なら大学も偏差値で格付けされており、東大の首席とFランの首席が同等なんてことはあり得ない。野球だけランク付けを無視したセイバーメトリクスという曖昧な指標なのに、これさえ知っていれば偉いという勘違いでマウントを取る脳足りんは、恥を知らない。
ちなみに、運動量保存則と力学的エネルギーの視点で、野球打者の「体格 × パワー × 打球速度」を物理的に数式で表すことができる。数式に興味がある方は、自身が納得できるように調べてちょうだい。
大柄な打者は「質量 × 速度」の運動量が大きく、小柄な打者は物理的な出力が劣る。これくらいは、中学生の理科レベルで分かることでしょ。