堕ちよ、極限のどん底まで堕ちよ。

電車を降りて帰宅の途についたのはまさに日の入りくらいの時刻だった。ほのかなる夕焼けとまん丸さを誇示する中秋の名月のコントラストが、私に何かを呼びかけている気がした。まだ夏日が続く一方、誰の目にも秋は来にけりである。

　ちょっと一息

夕焼けといえば赤、まさに赤い帽子のチームは熱い秋を演出してくれるはずだった。しかし、終わってみればマジック点灯寸前から2週間も経たないうちに自力優勝が消滅するという前代未聞の椿事となってしまった。まことに遺憾ではあるが、自身の不徳のいたすところだから仕方がない。

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ここにきて、さすがのもの知らぬカープファンも困惑したか怒ったか、SNSやらヤフコメやらで相当荒れているようだが、私に言わせれば遅い。そもそも「伝統の機動力野球」とか「投手を中心に守り勝つ野球」などという誤った世迷言を言っていたからである。私など、だから言ったじゃない、あんたらのせいだよ、と突き放すしかないのである。

　ちょっと一息

もちろん、まだペナントレースは終わってない。しかし、それはカープの猛反撃が起こることを意味しない。今カープのやっている野球を見たら、終わってみたら恥の上塗りになる可能性が高い。9月上旬まで首位にいたチームが終わってみたら4位でしたという可能性だって、あり得る。

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多くのカープファンにはそうならないように必死に応援しようというモチベイションになるかもしれないが、私はそうではない。むしろ、どうせ落ちるなら徹底的に堕ちてしまえと思う自分がいる。そのほうがかえって今後の赤ヘル再建のために好都合ではないかとさえ思うのである。何故か。

蓋し、そのほうが赤ヘルの現状の膿とか澱とかいうものを徹底的に絞り出す契機になるだろうから。

　ちょっと一息

はっきり言う。今のカープが駄目になったのは、「投手を中心に守り勝つ野球」という誤ったフィクションに一部ファンまで騙されてしまったからである。しつこいようだが、こんなものは嘘だ。過去黄金時代を使っチームは例外なく打ち勝つ野球だった。過去の事象は知らずとも、緒方孝市時代の三連覇の野球がどうだったかを思い返せばよい。徹底的に打ち勝つ野球だったではないか。

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なぜこんな嘘が罷り通ったか。言うまでもなくこれは松田元の発明品だからである。松田元というのは実に狡猾な男で、黄金時代は打力によって作られることなど承知の上で、あえてチームを弱体化させるために「守り勝つ野球」なるものを唱えたのである。これがハジメの手先の在広プレスにより伝播され、まんまとカープファンが引っかかってしまっているのだ。

　ちょっと一息

しかし、今年はチャンスかもしれない。もしカープがこのままずるずると後退してBクラスになったら、さすがに物わかりの良すぎるファンも気がつくかもしれない。どう考えても今年のカープは「守り勝つ野球」なるものを追求して敗北したのである。何よりオフェンスの強化をサボったことが響いているのだ。私からしたら当然のことだが、これまでハジメに騙されてきたファンも、そろそろ気がつくのではないか。まだ甘すぎるかな。

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だから、もう今年は堕ちるところまで堕ちろといいたい。なに、新井のこれまでの戦術やら用兵やらが間違っているのだから、こんな胸突き八丁で結果が出る道理ではないのだ。もちろん新井がコペルニクス的転回を見せて真っ当な戦術を取れば別だが、ハジメに尻尾摑まれてる「諸国民の王」にできるかな。

　ちょっと一息

かつて何度も引いた歌だが、再度引用する。これこそ「負けるが勝ち」の論理である、というのは駿台関西校英語科主任講師だった表三郎師の受け売りだ。

おのれより絶えずおのれを放逐し変貌し否定しそして敗北す（斎藤史）

まさに今のカープは、「おのれより絶えずおのれを放逐し」のゾーンに入っているのではないか。ならば、敗北によって変貌し、新たな高みに登ることもできるかもしれない。もちろん、そのためには敗北の悔しさが骨の髄まで染みている日本一の負けず嫌いのようなチームリーダーが欲しい。菊池じゃ足らないし、小園でもまだまだだ。野間？まさか。

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随分と長くなったが、別にカープに負けろと言っているわけではない。敗北を糧にして変貌せよと言うのみだ。それが早くできれば、熱い秋はまだまだ続く、かもしれない。それは新井次第だ。

孤独な戦士Charlieは、かつて私が標題でその冒頭を引用した演説のラストで”Let us all unite! Let us fight for a new world.”と呼びかけた。私はインターナショナリズムもヒューマニズムも信用しないが、その言葉を心あるカープファンにかけてみたいとさえ思う。